横浜市中区「野毛」にある立ち飲み居酒屋「ごえん」。お酒好きな人が日々集まる野毛の飲み屋街に、「持続可能」をコンセプトとした居酒屋として2020年3月1日にオープンしました。今回カリグラシスタイルは、「環境問題への解決」に取り組む新しいスタイルの居酒屋「ごえん」に注目しました。

「持続可能な飲食店」

『持続可能なお店』の秘密を探っていきましょう。 「ごえん」オーナーであるアクトダイニング株式会社(東京都渋谷区)代表取締役・田中洋介氏はこのように話してくれました。

“日々、飲食店はいろいろなものを消費しています。食材の余り、ゴミ、使い捨て容器、洗剤など…。それらは環境問題にもつながっていると感じています。消費行動が必要不可欠な飲食店だからこそ、率先して環境問題の解決に取り組んでいきたいと考えています。

― 田中氏がこのように話す環境問題が拡大している原因の1つには、日本の飲食店の数も関わっているのではないでしょうか。…というのも、 日本(東京都内)の飲食店の数は、大都市ニューヨークの約4倍以上 (2019年度) 。皆さんの自宅や職場周辺、最寄りの駅前など、さまざまなジャンルの飲食店が並んでいますよね。それほど日本人にとって外食というものは身近なものであり、食文化の伝統と多様性を表しているともいえるかもしれません。しかしながら、田中氏の言うように、飲食店が抱える「消費行動」は、飲食店の数だけ日々問題となっているともいえるでしょう。

「ごえん」で取り組む環境問題対策とは

カウンターは 建設現場の足場を再利用されています。また、店内の壁は、自然素材とも呼ばれる珪藻土(けいそうど)を使用しています。植物プランクトンの一種から成る土のことで、断熱性、耐火性、消臭性が高く、湿気が多い場所にも適しています。最終的に自然にかえすことができるので、リフォーム素材としても需要が高まっている自然に優しい素材です。

「ごえん」で提供される食器は、有田焼や琉球グラスなどの陶器やガラス製品を再利用したもの。制作過程で割れてしまったものや破片などを集め、新しい器として生まれ変わりました。

間伐材を利用した割り箸。

食器を洗う時は、川や海にも流せる環境にやさしい洗剤を使用されています。

お客様自身のスマートフォンでQRコードを読み取り注文するスタイルで、(もちろん、口頭での注文もOKです。)ペーパーレスを目指した取り組みになっています。混雑時でも、店員さんや周りを気にせず注文できるのは嬉しいシステムです。

― 「食」は私たちの生活と切り離すことができないもの。廃棄物が出てしまうことは防ぎきれないでしょう。その中で、「ほんの少しの取り組み」が増えることは、私たち顧客、そして飲食店の価値観を変えていくかもしれませんね。


1人では繋がらない。多くの人と一緒に目指す取り組みとは…

また、田中氏の考える「持続可能」は環境問題への解決に留まらず、次のように話してくれました。

“たくさんのお店がありますから、我々飲食店側が閉店しても、お客さんは困らないでしょう。(もちろん、お気に入りのお店がなくなってしまったら寂しいんでしょうが…。)そういった意味でも、持続可能というのを課題の1つにしたいと思っています。”

― 近年、某チェーン店が全国的に閉店するなど、多くの飲食店が姿を消しています。とりわけ2019年度に関しては、過去最多の倒産数となっています。飲食店が閉店することは、社員やアルバイトの生活にも関わってくることが予想され、深刻な問題といえるでしょう。

これに対して田中氏が挑戦したのは、クラウドファンディング「環境に配慮したお店を継続させるため」そして「たくさんの人にお店の存在を知ってもらうため」、クラウドファンディングで資金集めをされました。

そもそも、「ごえん」が掲げる「持続可能」の根底にあるのが、SDGs(エス・ディー・ジーズ)「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2015年に国連サミットで採択されました。貧困、飢餓、環境破壊、経済など、国際社会において問題視されていることを世界で解決するための目標です。

こうした世界共通の目標を基にしたコンセプトからか、「ごえん」のクラウドファンディングには海外に住まれている方からの参加も。世界から応援されている日本のお店の1つとなっています。

― 日本や世界から「ごえん」の活動はたくさんの共感を生み、目標金額を達成しました。支えた数だけ、より長く続けていきたいという想いは強まっていくかもしれませんね。


「ごえん」を生む

“ごえんのコンセプトをどのように伝えるのか、それがこれからの私たちの課題です。お酒好きが集まる野毛という地だからこそ、少しのことでも会話が生まれて、私たちの取り組みや環境問題にたいして興味関心を持ってもらえると嬉しいです。

― お店の名前の通り、さまざまなところから「ごえん」が生まれるよう、こだわりが詰まった立ち飲み居酒屋となっています。

店内には、食材の産地を表すポスターも貼られています。ごえんで目指すのは、本当の意味での「産地直送」市場や問屋を挟むことなく、提携している農家さんから直接送られることによって、より新鮮なものをお客様に届けることができます。

三陸地方、熊本、茨城などの農家さんから届いた新鮮な野菜や海産物は、揚げ物やお刺身など、素材の良さを活かしたメニューで楽しむことができます。「美味しい」という言葉から始まり、「これは○○産なんですよ」なんて会話が広がれば、農家さんたちのことも知れるきっかけにもなりますよね。

ちょっとしたこだわりはドリンクメニューにも。梅干し丸々1つから作り、オリジナルのタレを合わせた梅干しサワーや、お茶屋さんから取り入れた茶葉を使用した抹茶ハイ、玄米ハイなど、他の店舗では見られない工夫がなされています。

― コンセプトや想いが少しでも伝わるよう、さまざまな工夫がされていました。ここで出会った人たちは、いろんなことがきっかけで会話がはずみ、「飲み友」になったり「はしご酒」を楽しんでいるようです。中には、最後に「ごえん」に戻ってきて朝までお酒を楽しむお客さんも。「ごえんに来ればなにかが生まれる」そんな居酒屋になりつつありそうですね。

「縁」がつながり、続く

代々続いている飲食店の特徴は、美味しい食事やお酒を提供することだけではありません。社会の一員として、飲食店ができること、するべきこと、そしてそれらをお客様に共感してもらうことも、末永く愛される秘訣かもしれません。野毛に行った際はぜひ、お酒のお供に「ごえん」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

▼店舗概要

ごえん

神奈川県横浜市中区野毛町1-41-2 KOMATSUビル1F

▼営業時間

月~木 16:00~翌3:00 / 金 16:00~翌5:00 / 土 11:30~翌5:00 / 日・祝 11:30~翌3:00

▼アクセス

JR「桜木町」駅より徒歩約4分

※記事内容は2020年3月時点のものになります。現在の営業・メニューについては公式サイトをご確認ください。


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